(イラスト=マツモトヨーコ)

猫の存在に慰められた日々

猫との縁をつないでくれたのは兄です。父は猫が苦手だったので、兄と私が猫を飼いたいと言っても、首を縦に振りませんでした。でも、不治の結核になった兄が「お父さん、一生のお願いだから猫を飼ってよ」と言うのを聞いて、不憫に思ったのでしょう。とうとう許してくれました。

兄が15歳で亡くなった後、私も結核で1年以上、家で臥せって過ごしました。その間、無聊を慰めてくれたのが、兄が残してくれた本と猫。それ以来、猫は私にとってなくてはならない存在となったのです。

結婚と死別を経て、2番目の連れ合い(事実婚です)と暮らしていた頃のこと。みっちゃんという高貴できれいな猫と、チロという白っぽい猫が家族でした。みっちゃんは彼とは大の仲良しでしたが、夜寝るときは私と一緒。彼はチロと一緒に寝るのが習慣でした。

ある日、彼が「みっちゃん、おばあちゃんを寝かしつけてやんな。後で一緒におねんねしようね」と妙なことを言います。「どういうこと?」と聞いたら、「おまえさんが寝ついたら、みっちゃんはそぉーっと抜け出してオレの隣に来るんだよ。それでオレが朝食を作ろうとして起きると、一緒に起きて台所に行くんだ」。にわかには信じられず、なにバカなことを言っているんだと思っていました。

ある日の明け方、ガタガタ音がしたので、泥棒かと思って慌てて跳び起きた私。すると、ベッドにみっちゃんがいません。下に降りて彼を起こそうとしたら、なんと胸元にみっちゃんが寝ているではありませんか。みっちゃんは目を覚まし、私と目が合うと、「んっ?」と慌てた様子。猫のバツの悪そうな顔に、思わず笑ってしまいました。