その後、彼が病に倒れたのは65歳のとき。それから3年2ヵ月、完全寝たきりで入院生活を送りました。入院費もかかるので私は仕事も頑張らなくてはいけないし、できるだけ彼のお見舞いにも行きたいし……心身ともに疲れて家に帰ると、猫たちが出迎えてくれます。それがどれほど慰みになったか。
やわらかい毛を撫でて、猫の体温を感じながら、「いい子だねぇ」「いてくれてありがとう」と、よく語りかけたものです。
彼は70直前で亡くなりました。見送った後、ぽっかり穴があいたような喪失感に見舞われていたときも、猫たちにはずいぶん救われました。
受けた恩恵は計り知れず
91歳になった今、ひとりで外出することが難しくなり、家で過ごす時間が増えました。娘は仕事で出かけているので、助手やシルバー人材センターの人が来てくれる日以外は、昼間は家でひとりです。原稿書きや読書の合間に4匹の猫に話しかけたり、膝に乗ってきたら撫でたり……。なにかと心寂しくなりがちな老年期の日々を、猫たちは慰めてくれています。
最近は保護犬・保護猫、地域猫の活動も増えているようで、そういう運動をしている方を心から尊敬しております。また、できるだけ殺処分を減らすため、野良猫を保護し、不妊・去勢手術をして元いた場所に戻す活動に取り組む獣医師もいます。
私がこれまで猫から受けた恩恵は計り知れません。遺産というほどのものはありませんが、殺処分をなくす活動をしている方々にわずかながら寄付したい旨、遺言書に書こうかなと考えております。