居間には、新品で購入したり、寄贈されたりした絵本がズラリ。訪れた人が好きに手に取れる

絵本をきっかけに人生を豊かに

ずいぶん後にわかったことですが、勢いで預かった赤ちゃんのお母さんは、プロのピアニストでした。今では、「ゆめのきフェスタ」など私が主催するイベントで演奏してくださるほど絆が深まっています。

先日もわが家をふらりと訪ねてこられて、「何なんだろう。ここは実家のような気がする」と。それを聞いた瞬間、かつて建築家の先生が「このままがいい」とおっしゃった意味がわかった気がしたの。何の変哲もない普通の家だけど、だからこそ懐かしい家庭の温もりがあるんだと。これからも「そのまんま」を大事にしようと思いました。

でもね、さすがの私もコロナ禍の間はしばし文庫を閉鎖しました。その間、悩んだんですよ。絵本の貸し出しと電話で悩みを聞いてあげることぐらいしかできないし。一時は、閉館することも考えたくらい。

あるとき、電話をかけてきた一人の若いお母さんの声があまりにつらそうだったから、「コロナが落ち着いたら顔を見せて。そして絵本の会を開くから、親子で読んでくれる?」と言ってみたの。

後日、それが実現したときはうれしかった!子どもさんは今も、舞台で朗読することを楽しみにしているんですって。