「それでも勉強できて幸せだったし、時間が経つにつれて自信がついたのか、年齢は関係ないと思えてきて」(撮影:田原由紀子)
64歳で保育士の資格を取り、70歳まで現役で働き続けた石浜繁子さん。夫亡き後は、子育て中の母親と子どもが気軽に集まれる場所にと、自宅に文庫を開きました。81歳となった現在も精力的に活動を続けています(構成:野田敦子 撮影:田原由紀子)

<前編よりつづく

お母さんたちを支えたい

試験を受けると決めたら、勉強せねばなりませんから、何はさておき文房具を買おうと張り切ってデパートへ。ちゃんとした鉛筆やノートを買うのがうれしくてね。自分のために買い物することなんて長い間なかったから、憧れていたの。

お気に入りの鉛筆を握りしめて、教科書をひたすら書き写しながら暗記しました。あんまり力を入れてノートをとるもんだから、腱鞘炎がひどくなって肩までジンジンしびれたほど。それでも勉強できて幸せだったし、時間が経つにつれて自信がついたのか、年齢は関係ないと思えてきて。

そんな努力が実を結んだのは、2回目の受験のとき。どうやら最高齢の合格者だったらしく、「64歳の保育士誕生」なんて照れくさい記事が地元の新聞に載ったりもしました。

あんなに年がら年中、口うるさく命令していた夫が、試験勉強中はかいがいしくサポートしてくれたのもうれしい誤算でした。どこで情報を仕入れたのか、「スルメを噛むと脳が刺激される」「青魚を食べると頭がよくなる」なんて言って、せっせとごはんを作ってくれたの。

そのことを私が記者の方に話したもんだから、「内助の功」なんて新聞に仰々しく書かれてね。主役は私なのに。本人は、まんざらでもなかったみたいだけど。(笑)