「いっそ私の大好きな絵本の文庫にして、完全無料でいつでも寛いでもらえる場所にしたらどうだろう。そう思ったら、何だかとてもワクワクしてすぐに行動に移しました」(撮影:田原由紀子)
64歳で保育士の資格を取り、70歳まで現役で働き続けた石浜繁子さん。夫亡き後は、子育て中の母親と子どもが気軽に集まれる場所にと、自宅に文庫を開きました。81歳となった現在も精力的に活動を続けています(構成:野田敦子 撮影:田原由紀子)

のんびり息抜きし、寛げる居場所を

2018年、76歳のときに自宅の居間を開放して、「えほんのおうちゆめのき文庫」をオープンしました。保育士を退職した6年後のこと。大がかりなことは何もしていません。本棚を買い揃え、座り心地のいい椅子を置いたぐらい。

床の間もお仏壇も、そのまんま。絵本は、保育士時代に集めた約400冊から始め、自分の貯金や寄付金で少しずつ増やし、今では2000冊ほどになりました。

開館日は、近くの図書館がお休みの毎週月曜日。主に赤ちゃんや小さなお子さんを連れたお母さんたちがやってきて、絵本を読み聞かせたり、お絵かきする子どもの横でおしゃべりしたり、気に入った絵本があれば借りて帰ったり……。

他府県からわざわざ足を運んでくださる方もいるんですよ。遠路はるばる来ていただくほどの場所じゃないんですけど、何だか居心地がいいみたい。

農家に嫁いだ娘がおいしいお米を送ってくれるから、お昼時には、ごはんを炊いて具だくさんのお味噌汁と一緒にふるまうことも。

テーブルに炊き立てのごはんを置くと、「わあ!」と歓声が上がって、一斉におむすびを握ったり、それぞれが持ち寄ったおかずを並べたりして、和気あいあいと。特別なごちそうはなくても、みんなで食べるとおいしいの。不思議ですよね。