パイ作りを手伝ってくれる若いシェフ

そんなわけで、今年は育児フードバンクでもミンス・パイを作って利用者に提供することになり、わたしも調理に参加している。近所のコミュニティ・センターにはカフェが併設されていて、スタッフがキッチンの立派なオーブンを使わせてくれる。使わせてくれるだけではなく、そこにはめちゃくちゃ手際のよい若いシェフがいて、いつもパイ作りを手伝ってくれるのだが、彼は子どもの頃に預けられていた託児所でミンス・パイを焼いていたという。日本語で「うま味」とプリントされたエプロンをしたこの金髪の若者は、その託児所で日本人の保育士と遊んでいたそうで、最近また頻繁に会うようになった彼女の仕事ぶりをよく覚えているらしい。

「年末になるとなぜか両目にミンス・パイを当てて、陽気に腰を振って踊ってた」

当時を思い出しながら彼はそう言った。

どうやら、本人は覚えていなくとも、自分の息子とまったく同じことをしていたらしいのだ、その保育士は。