書斎の様子。たださんは68歳から絵本の賞への応募を始める。理由は「ダラダラ過ごしたくなかったから」。年に1~2作の応募という目標と締め切りを自らに課した。右手に並ぶのは過去の応募作

私が描く風景には、自宅近くの野山や、夫と山登りをしたときに見た景色が出てくることが多いですね。今回、大賞をいただいた『はるさんと1000本のさくら』は、桜の季節に、夫と吉野に出かけたことで生まれた作品です。「一目千本」と呼ばれる場所があるんですが、もう山が一面、桜で埋め尽くされていて、間にちょいちょいっと緑があって、その美しさに圧倒されました。

ふと見ると、山仕事をしているおばあさんたちの姿があります。あの人たちが一生懸命に生きてきた結果が、次の世代に残るといいなあ。そんなことを考えていたら、

「あと10人。
わたしは 86さい。
はるさんは かんがえます」

という書き出しがパッと浮かんで、あとは不思議なほどつるつる、とお話が出てきました。絵本ですが、子どもだけでなく、いろいろな世代の人に読んでもらえたら嬉しいです。

年をとると、願うことが多くなります。孫が元気に育ってほしい、子どもたちには笑顔で過ごしてほしい、平和な世の中になってほしい、みんなが仲良く幸せになってほしい。

だから、これは私の「願い」が詰まった一冊です。この受賞を力にして、またぼちぼちと絵本づくりを続けていこうと思っています。