男たちの休息

山から降りてきた私たちの次なるミッションは、休息である。

上陸、荷揚げ、アカパラ(筆者ら調査隊が見つけた「アカテツパラダイス」=通称アカパラ)調査に山上調査、ここまでは体力勝負が続いた。夜間調査もあり、さすがに疲れがたまっている。

『無人島、研究と冒険、半分半分。』(著:川上和人/東京書籍)

疲労がたまると事故を起こしやすいし、体調も崩しやすい。休息による体力の回復は、効率よく成果を出すためには不可欠なものなのだ。このため、私たち一次隊はBCで休息していた。

しかし問題が一つある。BCは島の南の端にあるのだ。

BCの北側には断崖絶壁がそびえ立っているものの、それ以外の方角には遮るものがまるでない。

この地形条件のため、BCは日の出とともに灼熱の太陽に襲われ、日没までの12時間以上をかけて強火の遠火でじっくりとグリルされる。

亜熱帯の日差しは容赦ない。人間だけではなく、食料も機材も全てが熱にさらされる。これはあまり良いことではない。

この暑さによる被害はすでに出ている。記録班のイトウは、登山をするよりも前に新品の靴の裏がべろりと剥がれてしまった。登山靴の接着剤は寒冷地には強いが、熱には弱いらしいのだ。

このため、BCには日除けのための広いタープが張ってある。その下は灼熱地獄から逃れられる世界で唯一の場所だ。

ただしここでは、人間様よりもサンプル様や食料様、繊細な電子機器様の方が地位が高い。なぜならば、これらの物資は人間とは違い、変質したり壊れたりすると自己修復できないからである。

日陰の中心部にはこれらの荷物を納め、私たち調査員はその合間の狭いスペースで休憩をとる。

この浜には相変わらずボウリングの玉のごとき石がゴロゴロ折り重なっている。このため荷物の隙間の地面はろくでもなく不安定だが、疲れた体にとって日陰はありがたい。

万が一にもこの日陰からはみ出そうものなら、宇宙からの怪光線によって瞬時に焼き尽くされ、隣の隊員も気づかぬ間に蒸発してこの世界から消え失せることだろう。

ゴツゴツした地面の形に合わせて体勢を変え、日陰の中でゆっくりと過ごす。時間とともに太陽が移動し、太陽ととも共に日陰の場所はずれていく。それに合わせて我々もモゾモゾしながら場所をずらしていく。

ずっと寝ていると、さすがに体のあちこちが軋(きし)み始める。しょうがないので三角座りをしてタープの下から外を眺めていると、海洋生物班のテツローが波打ち際で遊んでいる。いや、調査をしている。