ヘルメットにパンツ1枚

干潮時の海岸線と満潮時の海岸線の間を潮間帯と呼ぶ。ここにはカニや貝など濡れた半陸上を好む生物たちが生息している。彼はこの幅の狭い生息地にどんな生物がいるのかを調べているのだ。

それはよい。問題は彼の服装だ。

私たち調査隊は、落石から頭部を守るため調査時には常にヘルメットをかぶることをルールとしている。

このルールは出発前から互いに繰り返し確認し心に染み込んでいるため、もちろんテツローも忠実に守っている。

しかし、彼は首から下にはパンツ1枚しか身につけていない。そんな無防備な姿で、彼は本当に何か守れているのだろうか。頭だけは助かるかもしれないが、頭以外も助けた方がいいよ。

ふと横を見ると、隣ではシュミヤがボロ切れをまとっている。彼はルート工作班と植生班を併任する戦う研究者だ。

よく見るとそのボロ切れはズボンの成れの果てだった。

「いやぁ、穴が開いちゃって。涼しくていいんだけどさ」

ズボンにとって60cmの穴は致命的なサイズである。もうズボンとしての機能は失われているのだから、それ以上酷使しないであげておくれ。