遊んでいるわけじゃありません
まだ島に来て1週間とはいえ、過酷な調査によりみんなお疲れ気味で少しおかしくなっているようだ。やはり休息が必要である。
そこで、みんなのために憩いの場を提供することにした。よし、カフェを開こう。
カフェのマスターになるのは私の夢の一つだ。まさかこんなところで実現するなんて、思ってもいなかった。
こうして、疲れた戦士たちを癒すため、カフェ・パラディッソ南硫黄本店が開店したのである。
ちなみに「パラディッソ」は、BCにいた時に訳もなくエンドレスで頭の中に鳴り響いていたサザンオールスターズの楽曲『シュラバ★ラ★バンバ』の歌詞に由来する。
まずは食料がしまわれた発泡スチロールの箱の蓋に看板娘の絵を描き、あけみちゃんと名付ける。アルマイトの大鍋の蓋の上には、油性マジックでお店の名前を落書きする。
そして、カフェの魅力を左右する最重要要素、メニューの開発に着手する。
普段の食事はアルファ米とレトルトパウチばかりだ。いささか飽きてきたので、少し気分を変えたいところだ。まずはアルファ米をおにぎりにしてみる。
それだけじゃ寂しいから、携帯食用の柿の種を混ぜ込んでみた。柿の種の原料は米粉なので、米との相性はよかろう。
うん、意外とおいしい。調子に乗ってたくさん作る。
次は、インスタント味噌汁用の生味噌を塗って、コンロで焼いて焼きおにぎりを作る。大量の発汗をともなうこの島では、塩分の摂取は不可欠である。
お味噌を使ったので、味噌汁用の乾燥ワカメが余ってしまった。ラーメンの具用の乾燥野菜とともに水で戻し、食料庫から発見されたビビンバの素を混ぜてエスニックワカメサラダの完成だ。
なんだか楽しくなってきたぞ。
よし、いろんなティーバッグがあるから、全部混ぜちゃえ! 麦茶に緑茶に烏龍茶、ついでに紅茶も入れてみよう。
うん、これはちょっとまずいな。失敗だな。おいしいものを混ぜたのになぜおいしくないものができたのか、不思議でならない。
「食べ物で遊んじゃダメですよ」
いや、遊んでいるわけではないのだ。これは、在庫管理の一環で、BCで待機する隊員の大切な仕事なのである。