性加害を繰り返してしまうことを頭では理解している

さらに以前、私がとある地方の刑務所で子どもへの性加害者に対して再犯防止プログラムを実施していた際、参加者のひとりが「僕の場合は、少なく見積もってもその3倍はやってると思います」と真顔で言っていました。

この発言に対して、同席したほかのメンバーも大きくうなずきました。

『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(著:斉藤章佳/幻冬舎新書)

つまり、ひとりの加害者が1000人を超える子どもに加害行為を行い、しかもそのほとんどが誰にも気づかれず、被害者はそのときは何をされたかわからないことが多いため事件化しない……ということです。

また、刑務所内での再犯防止プログラムが終わった後に、ある受刑者からはこんな本音を打ち明けられたことがあります。「先生、俺このまま刑務所から出たくないよ」「また絶対に小さい子をやってしまうのがわかってるんだ」。

刑務所に収監されている限り、小さい子どもと接触する機会はありません。しかし、刑罰を受けてもなお、いざ出所したら自分が再び性加害を繰り返してしまうことを頭では理解している。

この言葉は彼らのそんな切実な思いを伝えるメッセージに思えて仕方ないのです。