なぜ繰り返すのか
さらに、性犯罪の前科が2回以上ある人に絞って、同じ性犯罪の前科があるか調査したのが下の図です。
ここでは小児わいせつ型の13人のうち、84.6%にあたる11人に小児わいせつ型の前科があるということです。痴漢を除く強制わいせつ型(44.0%)や単独強姦型(63.2%)と比べても、同一類型の小児わいせつ型性犯罪を繰り返す傾向がうかがえます。
つまり、子どもへのわいせつ行為で逮捕され刑務所に入ったにもかかわらず、出所してまた子どもに性加害を繰り返していた……という実態がデータからも明らかになっているわけです。
なぜ力が弱く、抵抗もできない子どもへの性暴力を繰り返すのか――このもっともシンプルな問いこそ、善良な市民が抱く共通した疑問であり、憤りだと思います。
※本稿は、『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(著:斉藤章佳/幻冬舎新書)
子どもへの性加害は、心身に深い傷を残す卑劣な行為だ。
なかでも問題なのが、顔見知りやSNS上にいる“普通の大人”が子どもと信頼関係を築き、優位な立場を利用して性的な接触をする性的グルーミング(性的懐柔)である。
「かわいいね」「君は特別だ」などと言葉巧みに近づく性的グルーミングでは、子ども本人が性暴力だと思わず、周囲も気づきにくいため、被害はより深刻になる。
加害者は何を考え、どんな手口で迫るのか。子どもの異変やSOSをいかに察知するか。性犯罪者治療の専門家が、子どもを守るために大人や社会がすべきことを提言。