忘れたくない視点

隅々まで掃除が行き届き、笑顔いっぱいのスタッフの常駐する特別養護老人ホームの面会室で、ちょっとおめかしした藤澤さんのお母様と、ご夫婦の撮影をさせていただきました。

取材を終えた後の帰り道。夫の緑朗さんが「これでよかった、と思っています。でも『じゃあ、またね』と別れるとき、『ああ、寂しいのかな? やっぱりかわいそうだったかな?』と毎回心が揺れるんですよね」とぽつり。「正解」が揺れるのは、そこに優しさがあるからなんだと思います。

「これでいい」とフィックスさせてしまった方がラクなのに、「これでよかったのかな?」と相手に心を寄せるから、今まで「正しい」と信じようとしていたことがぐらりと揺れる。だとすれば、正解を見つけることだけが、ゴールではないのだと、いつまでも揺れ続けてもいいのだと思いたくなりました。 

両親の老いを受け止めることはつらいけれど、介護に正解はない、と知ることも大事。誰かに頼ることに罪悪感を持たず、自分を消耗しないという視点も忘れたくないもの

 

※本稿は、『歳をとるのはこわいこと? ――60歳、今までとは違うメモリのものさしを持つ』(文藝春秋)の一部を再編集したものです

 


『歳をとるのはこわいこと?――60歳、今までとは違うメモリのものさしを持つ』(著:一田憲子/文藝春秋)

仕事、健康、家族、介護、更年期……なんだか心配ごとだらけの
人生後半戦を助けてくれるもの。

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若い頃から、ずっと何かを怖がってきたイチダさんは、
「怖さの正体って、一体なんだろう」とつくづく考えてきました。
それが、60歳を目前にして「あれ、そんなに怖がらなくても大丈夫かも…?」
と思い出した理由は?

まっすぐ進んで答えが見つからなかったら、「斜めにジャンプ」してみて。
それは、前と違う「新しいものさし」を持って、自分の怖さや不安を計り直すことなのです…!!

イチダさんが「怖い」を少しずつ手放すトライ&エラーがつまった、
笑顔で歳を重ねるための「自問自答」エッセイ!!