一歩引いた目で自分の人生を振り返る

切除手術が必要だ、とわかったのは11月のことでした。そこから「もし、癌だったらどうしよう」と四六時中そのことが頭を離れませんでした。でも、どこかで「ま、いいか」と思ったのも事実です。

「え? もういい?」とそんなことを考える自分にびっくりしてしまいました。なにがもういいのかな? なぜだか、あっけらかんとした自分の心に問いかけてみると……。「私、ここまで十分頑張ったもの」と思ったのでした。

フリーライターになって、ひとりで食べていけるように、仕事を頑張ってきたよなあ。『暮らしのおへそ』というムックを立ち上げたり、『外の音、内の香』というウェブサイトを作ったり。ライター塾も始めたし、あれこれ、いろんなことをやってきたんだよなあ。こんなにやれたら、もう十分だろう、と思ったのです。

それでも、夜ベッドに入ると「もし……」と、胸いっぱいに暗い気持ちが広がります。朝起きても、そのモヤは晴れずに、ずっとどんよりとした気分でした。

夫も人間ドックでひっかかり経過観察の身。ああ、人生後半になると、突然こんな風に、健康が脅かされるようになるんだなあと、驚いてしまいます。

思えば、これまで、いろいろ大変なことはあったけれど、私の人生はそこそこ順風満帆だったのかもしれない。ふとそんな考えが浮かんできました。え?そうだったの?とこれまたびっくり! 

というのも、私は若い頃からずっと「まだまだダメだ」「もっとよくなるはず」と物足りなさを燃料にして、エンジンをふかしてきたのですから。

でも、ここにきて冷静に一歩引いた目で自分の人生を振り返らざるを得なくなったとき、好きなことを仕事にし、それなりに努力が成果に結びついてきたことは、幸せだったんだ!と自分を認めてあげたくなったのでした。

なのに……です。突然、自分の力ではどうしようもない「癌かも」という事実が、やってきちゃった!