今尾さん「戦後の地図記号は長年にわたって統廃合と簡略化が進められてきた」(写真提供:Photo AC)
地図を読む上で欠かせない、「地図記号」。2019年には「自然災害伝承碑」の記号が追加されるなど、社会の変化に応じて増減しているようです。半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた「地図バカ」こと地図研究家の今尾恵介さんいわく、「地図というものは端的に表現するなら『この世を記号化したもの』だ」とのこと。今尾さんは、「戦後の地図記号は長年にわたって統廃合と簡略化が進められてきた」とも言っていて―― 。

風車の記号

平成18年に発電用の「風車」の記号が登場したが、実は風車(風車房)の記号は戦前の図式にすでに存在した。

地域によって偏りはあるが、たとえば大阪府南部の泉州で行われていた風車による灌漑、知多半島などの地下水をくみ上げるための風車、塩田地帯での揚水風車などの存在を反映したもので、記号としての知名度は低いが、明治の「迅速測図」から4枚羽根(支柱の縦線を加えて6枚羽根にも見える)のデザインが採用されている。

揚水や排水、そして製粉などのために風車動力は世界的に古くから用いられており、このうち最も有名なのはオランダだろうか。

誰が最初に言ったのか知らないが、「世界は神が作り給うたが、オランダはオランダ人が作った」の通りに、このネーデルラント(低地国の意)では何百年も昔から浅海の干拓事業が営々と続けられてきた。

干拓地はかつての海の底だから必然的に標高はマイナスで、堤防のあちらこちらで少しずつ水が滲み出してくる。これを排出するのが風車の役割である。