イギリス在住のブレイディみかこさんが『婦人公論』で連載している好評エッセイ「転がる珠玉のように」。今回は「本の未来」。英国の小学校で行われた本について考える授業。子どもたちの意見から見えてきたものは――(絵=平松麻)

3世代の異種表現コラボレーション

岩波書店から『その世とこの世』という新刊の見本が届いた。『図書』というPR誌で連載していた谷川俊太郎さんとの往復書簡が書籍化されたのだ。

その谷川さんとは、連載が終わるまで実は一度もお会いしたことがなかった。先日、NHKラジオ第1の『高橋源一郎の飛ぶ教室』で初めて対面した(とはいえ、リモートだった)が、初対面の印象は「谷川さん、そりゃあモテちゃいますよ」だった。スクリーン越しでもそれは伝わってきた。これには、伊藤比呂美さんも賛成してくださるに違いない。

谷川さんのことを詳しく書くのは割愛し(詳しく知りたい方は本を読んでください)、ここで書きたいのは、奥村門土さん(a.k.a.モンドくん)のことだ。この本は谷川さんとわたしだけでなく、画家の奥村さんも参加し、重要な役割を果たしているからだ。奥村さんは、小学生の頃、見たままを描く天才似顔絵師として話題になったらしい。当時、すでに英国にいたわたしはこのあたりのことをよく知らないのだが、画集を出したり、国内外で個展を開催したりしてきたという。その奥村さんが描いたイラストが本の中にちりばめられており、期せずして3世代の異種表現コラボレーションになった。