「長く続くストレスや強過ぎるストレスは、特に感情面で問題を引き起こしてしまいます」(写真提供◎photoAC)
厚生労働省の発表では令和4年の自殺死亡率は17.5%で、前年に比べて男女ともに増加していました。快適な暮らしができるようになった現代ですが、精神的な不調で苦しむ人は多いです。そこで、100万部突破した『スマホ脳』シリーズの著者であり、精神科医のアンデシュ・ハンセン氏による「心の取説(トリセツ)」をご紹介します。人が感じる不快な感情の一つが「強い不安」。そもそもなぜ人間は「不安」を感じるのでしょうか――。

ストレスとは何か

心配、強い不安、パニックといったつらい感情を理解するために、まずは人間の「ストレスシステム」がどのように働くかを見てみましょう。

ストレスというのは身体や心への負荷に対する反応で、「感情」というよりは「身体の中のプロセス」です(その2つにどこで線を引くかは非常に難しいところですが)。例えばジョギングをすると身体はストレスを感じますし、学校でテストを受ける時もそうです。血液を筋肉に送るために心拍数が上がり、集中し、その時に必要のない身体のシステムはスリープモードに入ります。

これが「闘争か逃走か」と呼ばれる状態で、命を失わないように闘うか、あるいは逃げ出すために身体が態勢を整えるのです。

適度なストレスは良い刺激になり、短期間感じるのは悪いことではありません。何かやらないといけない時に身が引きしまるし、慎重にもなれます。

しかし長く続くストレスや強過ぎるストレスは、特に感情面で問題を引き起こしてしまいます。