脳内の火災報知器

扁桃体にはいくつも役割がありますが、その1つが「脳の警報センター」としての役割です。扁桃体はその役割を愚直に果たしていて、ちょっとした危険にも大々的に警報を鳴らします。

念のために鳴らすこともあるので、実際には何事もない場合もあります。それでも、肝心な時に鳴らし損なうよりは鳴らし過ぎた方が良いという仕組みになっているのです。

要は火災報知器のようなものです。トーストがちょっとこげたくらいでいちいち鳴るのは厄介ですが、夜中に本当に火事が起きた時に鳴ってくれればいいのです。私たちの脳もまさにそんなふうに反応します。

「本当に危険な時に鳴らし損ねるよりは、念のため間違って鳴らすくらいかまわない」と考えているのです。脳の1番大切な仕事はあなたを生きのびさせることなのですから。

 

※本稿は、『メンタル脳』(新潮社)の一部を再編集したものです


メンタル脳(著:アンデシュ・ハンセン, マッツ・ヴェンブラード 翻訳:久山葉子/新潮社)

「史上最悪のメンタル」と言われる現代人。とりわけ若年層の心の問題は世界的に深刻だ。ユニセフが警告を発し、アメリカ政府は「国家的危機」とまで言及、日本でも高校生の30%、中学生の24%、小学4~6年生の15%が中等度以上のうつ症状を訴えているとの調査結果もある。脳科学からメンタルの問題を解説した世界的ベストセラー『ストレス脳』をあらゆる世代向けに、わかりやすくコンパクトにした〈心の取説(トリセツ)〉。