あふれる指南書と一線を画す
目を見て話す、笑顔を大切に、気のきいたひと言を……。世には「話す力」をアップさせるためのノウハウ本があふれているが、読むほどにプレッシャーに押しつぶされる人が多いのではなかろうか。
「カトパン」の愛称で知られるアナウンサーの手になる本書はこれらとは一線を画す。なんといってもタイトル「会話は、とぎれていい」が、いい。
期待に違わぬ本であった。フジテレビに入局した頃、本心からではない笑顔だと、「笑い方が大げさで下品に見える」と注意されたときの葛藤。一方で、「人の話を聞いているとき、顔が死んでいる」と言われたときのショック。失敗談もまじえながら、話し方で〈愛される48のヒント〉を探っている。
名言録にもなっている。「経験が浅いころよりも、長く続けてきた今のほうが、本番前に緊張する」と言い、周りの人の緊張を和らげるタモリさん。フリーになって風当たりが強かった時期、「誰がそんなことを言っているの? 私の耳には全然届いてこないよ」と言葉をかけてくれた有働由美子さん……。収録現場などで会う著名人の素敵な振る舞い、言葉を満載し、テレビには映らないテレビ人の隠れたタレント(才能)にも光を当てる。こうした学びの姿勢、相手への思いやりが、「カトパン」の愛される理由であろう。発売5ヵ月で7万7000部を突破した。
もちろん、ちょっとしたノウハウはあります。それは、「挨拶の第一声は、少し高めの声を心がける」であり、「人の話を聞くときは、頰の肉を意識してキープする」である。口角を上げることを意識してしまうと不自然な笑顔になるという。だから口よりも頰の肉を意識することが肝心なのだ。これぞプロらしい指南ではないか!
著◎加藤綾子
文響社 1180円