「さよりちゃんは行ったの?」
「今日は大丈夫だったよ」
「うん」
 さよりちゃんは食品加工工場の夜勤。この後朝方の三時まで。
 その方が時給は確かにいいんだけど、やっぱり身体に応えるっていうか、規則正しい生活ができなくなることが多いから止めていたんだけど。最近は調子良いからってまた夜勤と日勤の繰り返しに戻ってる。
 無理しなくていいんだけど。なみえちゃんもスーパーのパートやってるから、なんとかなってるのに。
 台所の奥に居間とあと二部屋。お風呂とトイレ。2LDKっていうとカッコいいけど、そんな感じじゃないただの木造のアパート。
 けっこう古いけど、大家の天野(あまの)さんがものすっごく優しくてきちんとした人で、アパートの補修とかも嫌な顔せずやってくれてるし、入居者もちゃんとルールを守れる人を選んでいるって言ってて、だからうちのアパートは小奇麗。
 言葉が悪いか。
 古いけれども、きちんと手入れされているアパート。
 八畳間がお母さんとお祖母ちゃんの部屋アンド寝室で、六畳間は私の部屋。一応、学生だからね。ちゃんと勉強できるように一人で部屋を使わせてもらってる。でもまぁ居間もほとんどお母さんとお祖母ちゃんの部屋になっているけれど。
 だから、とてもお客さんをお迎えなんかできない家。お客さんなんかめったに来ないけれど。もしも私の友達が来たいって言ったら、台所も居間も突っ切ってソッコーで私の部屋に入ってもらうけど。
 バイトを始めてから家で晩ご飯を食べることがほとんどなくなってしまった。毎日毎晩まかないで〈ロイヤルディッシュ〉のメニューを何か食べることができるから。
 なので、太ってしまった。
 めっちゃ困る。困ってる。
 なので、なるべくカロリーの少なそうなものを食べるようにしているんだけどさ。でも、美味しいんだよねうちのメニューなんでも。
 生活のためにバイトしている苦労している高校生なのに、太るってどうなんだって。しょうがないよね飲食業なんだからさ。まかないあってのものなんだからさ。
 まだまだ育ち盛りなんだから平気だよってなみえちゃんは笑うけどさ。太るのは簡単だけど、痩せるのはすっごいムズカシイんだからね。