家で、さよりちゃんの作る晩ご飯を食べられるのは、土日ぐらい。土日は、昼間のシフトに入らせてもらっているから、夜は家に帰ってきて食べるからね。
 でも、内緒なんだけど、うちのメニューをパック詰めして貰(もら)ったりもしているんだ。食費少しでも浮くだろうって店長が許してくれて。
 だから、家でも家族で〈ロイヤルディッシュ〉のメニューを食べるとかあるんだけど、、そういう生活が続くようになってから、さよりちゃんの作る普通のご飯がすっごく恋しいって思うことがある。
 ただのお味噌汁が美味しかったり、普通のカレーライスが涙出るんじゃないかってぐらいに優しい味だったり。
 私は高校生にして既に故郷の実家の味を懐かしむ大人の気持ちがわかるようになってしまっているんだ。
 部屋で着替えて、さて私もお風呂入ろうと思ったら、玄関が開いた。
「ただいま」
「あれ?」
 さよりちゃん帰ってきた。
「どうしたの? 具合悪くなった?」
 まだ全然帰ってくる時間じゃない。なみえちゃんも心配そうに腰を浮かせた。
「違う違う」
 手を振って苦笑しながら、靴を脱いで上がってくる。
「シフト間違い」
「間違い?」
「向こうの間違いで人が余っちゃったの。だから、帰ってきちゃった」
「そっか」
 まぁ良かった。本当に無理しなくていいんだから。
「あ、先にお風呂入っていい? 晩ご飯は?」
「食べたから大丈夫。みちかちゃんお先にどうぞ」
 うん。
 女だけの暮らしって、楽でいいってホントに思う。自分たちで全部できるし、お風呂とかもなんにも気にしないで入ってパジャマとかで、夏なんて下着のままで出てこられるし。そういうことするとはしたないってなみえちゃんに怒られるけど。