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「え、マジか」
「マジなの」
 本当は来る予定はなかったけど、昨日に続いて今日も〈バイト・クラブ〉に来て、夏夫くんに話さずにはいられなかった。っていうか、さよりちゃんも話してもいいよって言ったから。
 他の皆は来てない。
「うちの母親、さよりっていう名前なんだけど、渡邉さよりは夏夫くんのお母さん、志織さんだっけ? 同じ高校の先輩後輩。三つ違うから同時期には通っていなかったけれど、顔見知り」
 うーわ、って夏夫くんが天井を見た。
「びっくりだ。なんか、すげえ偶然が続くな。こないだはあれだったし」
「そうだね」
 三四郎(さんしろう)の担任の先生が、夏夫くんのお母さんのことを、そしてお父さんのことも知っていたし。
「でも、皆同じ町に住んでいるんだから、どこかで繋がっていても全然不思議じゃないって」
「そうだけどな」
「夏夫くんのお母さん、志織さんが高校の頃に、喫茶店でバイトしていたのは知ってるんだよね?」
 夏夫くんが頷いた。
「聞いてる。伯父さんがやっていた店だって。そこでバイトしていたっていうことだけはね」
「そこのお店の電気工事をね、うちのお祖父ちゃんがやったんだって」
「マジか」
「それで、うちのお祖母ちゃんもお母さんもお店のことは知ってて、よく行っていたって。だから、うちの母親も夏夫くんのお母さんのことをよく知ってるって」
 うーん、って唸る。
「おふくろ、全然そんなこと話さないからな。誰かに会ったとか。あー、じゃあさ、みちかのお母さんも、うちのおふくろのいた喫茶店に来ていたんだったら、それでたぶん三四郎の六花(りっか)先生も来ていたんだろうからさ」
「うちのお母さんと六花先生がその頃に、その店で顔を合わせていても全然不思議じゃないね」
「年も、そんなに変わんないんだろ? 同じ三十代だろ?」
「ギリね。うちのお母さんは」
 もうすぐ四十代になるから。