〈カラオケdondon〉の奥まった一室。そこは通称〈バイト・クラブ〉のための部室。ここの部員になるための資格は、【高校生の身の上で「暮らし」のためにバイトをしていること】。紺野家の思わぬ事実を知ったみちか。無関係だと思っていた人と人との関係を〈バイト・クラブ〉が繋いでいく――。

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「たぶんって?」
「喫茶店の看板娘って言ったでしょ? 〈喫茶カノン〉は志織ちゃんの伯父(おじ)さんがやっていた店なの。そこの常連さんに、ヤクザの人がいたのは知ってる。何度か店で会ったことあるしね。それにね」
 ちょっと唇を曲げた。
「あまり言いたくなかったことだけど、同級生に暴力団に入ってるのがいるのよね。今もたぶん辞めてないそうだと思うんだけど」
「えー、マジ?」
「マジよ。名前なんか覚えなくてもいいけれど」
「でもちょうどいい機会だよ」
 なみえちゃんが言った。
「この先あの男に会うことがないとも言えないんだからね。あんたの娘だってことがわかれば、変なことはしないだろ、あいつも」
「なみえちゃんも知ってるんだ?」
 頷いた。
「さよりの幼馴染(おさななじ)みと言ってもいい男だよ。同級生のね。黒川優馬(くろかわゆうま)ってのが、名前だよ」
 くろかわゆうま。
 なかなかカッコいい名前。