「よくわかんないけど、ヤクザになるのにもいろいろあるってことなんだね。単純に悪い奴らがなるんじゃなくて」
「そういうことね」
 さよりちゃんが溜め息をついた。
「バカだなって思ったわよ。そんなんで」
 そんなんで。
「じゃあ、さよりちゃんは優馬さんがヤクザになった理由というか、義理っていうのが何なのか、知ってるんだ」
 うん、って頷いた。
「一応、幼馴染みだしね。たぶん、あいつといちばん仲が良かった女子だったと思うから、周りからもいろいろ聞いたし。でも、そんな話あなたは別に詳しく知らなくていいことだから」
 まぁ全然関係ないからね。
「ひょっとしてその優馬さんは夏夫くんのお父さんと同じ組とか?」
「たぶんだけれど、違う暴力団だと思う」
「え、違うんだ」
「たぶんね。本当に詳しいことは知らないけど」
 ふーん、ってさよりちゃんがまた溜め息をついた。
「それにしても、そうか、夏夫くんっていうのか。志織ちゃんの子供は」
 そうです。
「遊びに来たりする? うちに」
「まさか。〈バイト・クラブ〉で会ってるだけだよ」
「カレシになったりしない?」
「今のところは、ありませんねそういうのは」