今後の作品作りへの想い

竹林が持つ神秘的な雰囲気にくわえて、本書には「東の東の間」なる不思議な部屋が登場する。この部屋の秘密が本作の大きな鍵を握っており、森見さん自身の深層心理ともダイレクトにつながっている。

“闇雲に怖れているよりは、新しい光を入れたほうがいい”――「東の東の間」にまつわる台詞の一節だ。この言葉には、森見さんの今後の作品作りへの想いが反映されている。

子どもの頃から、家の周りを探検しては不思議な場所を探して、「この向こうは別の世界に通じていそうだな」と妄想するのが好きでした。当時から小説を書いていたので、そういう場所を見つけては、それっぽい物語を書いていましたね。

僕が育ったのは奈良の郊外なのですが、造成中で家が建つ前の荒れ地が残っている一方で、古い神社や森もあったから、尚さら想像力を刺激される環境だったのかもしれません。