介護事業を始めた当初、紹介された最初の利用者はいわゆる“クレーマー”でーー(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
公益財団法人介護労働安定センターが実施した2022年の調査によると、介護労働者の平均年齢は50歳、男女比は男性が約2割、女性が約8割だそう。そのようななか、「介護スタッフの平均年齢は29歳、男女比は男性7:女性3」だという株式会社ビジョナリーの代表を務めるのは丹羽悠介さん。その丹羽さんいわく、「事業を始めた当初、紹介された最初の利用者はいわゆる“クレーマー”だった」そうで――。

曲者の“クレーマー”から事業をスタート

介護には大きく分けると訪問介護と施設介護があります。

訪問介護は、介護スタッフが利用者(要介護者)の自宅などを訪問して介護サービスを提供するもの。施設介護は、利用者を施設に受け入れて介護サービスを提供します。

私が最初に選んだのは、訪問介護。資金も土地も建物もない状態での起業では、訪問介護を選ぶのがベストな選択だと考えたのです。

ビジョナリーの事務所は、母が経営していた焼肉屋の奥にあるスペースを無料で借りることにしました。

スタート時のメンバーは、ともにホームヘルパーの資格を持つベテランの姉とその友人の女性、そして私の合計3名です。私は急いで厚生労働省の認定を受けるホームヘルパーの資格を取りました。

ケアマネジャー(介護保険制度に基づいて、高齢者や介護が必要な方に対してサポートを行う専門職)から紹介された記念すべき最初の利用者は2組。どちらも、いわゆる“クレーマー”でした。

なぜなら、地域の事業所として最後発だった私たちは、他の事業者が「この人たちは、自分たちでは支えることができません!」と匙を投げた利用者を支援する仕事から始める他なかったのです。2組とも70代前後の夫婦。要介護度5でした。