一人の人間同士として対等に向き合う
3人で話し合いを重ねながら、「私たちが見放したら、この地区で介護サービスを提供する事業者がいなくなってしまう。そんな状況で利用者が亡くなったりしたら、後味の悪い思いをするのは目に見えている。後発だからこそ、私たちは地域の介護のしんがりを喜んで務めよう」というところに落ち着きました。
決められた介護サービスを着実に提供するのはもちろんです。そのうえで納得できない言動には、「なぜそんな無礼な態度を取ったり、失礼な言い方をしたりするのですか?」と反論しました。
利用者を神様扱いせず、一人の人間同士として対等に向き合うことが、関係改善の突破口になると信じていたからです。
この経験は、“カスハラ”には毅然と対応するという、私たちの基本スタンスに反映しています。
その後も不適切発言やハラスメントは続きましたが、ちょっとした変化もありました。食事が美味しかったときに笑顔を見せてくれたり、機嫌がいい日には「ありがとう」と帰り際に労(ねぎら)いの言葉をかけてくださったりするようになったのです。
ほんの小さな変化でも、それは私たち3人のやりがいになり、いわゆる困難事例でも、正面から向き合えば攻略できるという自信にもつながりました。
2組中1組は、ケアマネジャーの提案で施設介護へ切り替わりました。もう1組は、お亡くなりになるまで8年ほど訪問介護サービスを提供。
離れて暮らしていた家族から「私たちに変わり、最後まで“頑固者”の面倒を見て頂いてありがとうございました」と感謝されました。彼らとは、いまでもたまに連絡を取り合う仲です。
※本稿は、『マッチョ介護が世界を救う! 筋肉で福祉 楽しく明るく未来を創る!』(講談社)の一部を再編集したものです。
『マッチョ介護が世界を救う! 筋肉で福祉 楽しく明るく未来を創る!』(著:丹羽悠介/講談社)
第1章 フィットネス実業団はこうして生まれた
施設介護へのシフトが、フィットネス実業団を生み出しました
第2章 介護ビジネスこそが日本を救う
「なりたい自分」を諦めてなくてもいい世界にします
第3章 介護が教えてくれた「出会えてよかった人」でいるための方程式
第4章 ゼロからの介護ビジネス経験が生んだ“へそ曲がり”の仕事術
「ホウレンソウ」不要な組織こそが最強です
第5章 どん底の私を介護が救ってくれました
憧れの美容室で社会人としてスタート
第6章 ファミリービジネスからビジョン経営へ