無気力になり、ネガティブな沼に沈んでいく私の心中を察した母が勧めてくれたのが、介護の仕事だった(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
公益財団法人介護労働安定センターが実施した2022年の調査によると、介護労働者の平均年齢は50歳、男女比は男性が約2割、女性が約8割だそう。そのようななか、「介護スタッフの平均年齢は29歳、男女比は男性7:女性3」だという株式会社ビジョナリーの代表を務めるのは丹羽悠介さん。その丹羽さんいわく、「母が勧めてくれたのが、介護の仕事だった」そうで――。

挫折の後、介護の仕事との運命的な出合いが待っていたのです

私はまだ22歳の若造でした。

大学に進学していれば、社会人としての第一歩を踏み出す年頃です。でも私は、経営者になる夢が破れたばかりか、詐欺まがいの手口に引っかかって多額の借金を背負い、「人生、詰んだ」と思い詰めるような絶望感と挫折感に押しつぶされていました。

名古屋を追われるように岐阜へ再び戻ってきた私は、再度母のお店(そのときは居酒屋から焼肉屋へ業態変更していました)の手伝いを始めました。実家に住み、お店の手伝いでもらったお小遣いを、借金返済に充てることにしたのです。

私は騙されたことで深刻な人間不信に陥り、将来を悲観して「このまま世の中から消えてしまいたい」と思い詰めるようになっていました。

休日も自宅に引きこもり、無気力になり、ネガティブな沼に沈んでいく私の心中を察した母が勧めてくれたのが、介護の仕事だったです。

私には、歳の離れた姉が一人います。彼女はホームヘルパー(訪問介護員)として長年訪問介護の仕事をしていました。

母は「あなたは、他人から騙されるくらい素直で優しいのだから、介護の仕事が向いているかもしれない。お姉さんの手伝いをしてみたらどう? うちでバイトをするよりも、お金にもなるはずだよ」と言ってくれました。

私は介護にまったく興味がなく、自分にできるとも思っていませんでした。

母の勧めは、「いや、俺はいいよ。無理だよ」といったん断りました。それでも姉も「あなたは元美容師なんだから、利用者さんの髪を切ってよ。それならできるでしょ」と誘ってくれたので、ある日姉の訪問介護に付き添うことにしました。