年齢にとらわれず、好きなことをしている人は若々しい(写真提供:Photo AC)

厚生労働省によると、日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳(2019年)。一方、日常生活を健やかにおくれる「健康寿命」は、男性72.68歳、女性75.38歳と、そこには10年近くの差異があるのです。寿命を迎えるまで、なるべく自分の力で元気でいたい――。そんな健康長寿を実践しているのが、92歳で現役の看護師の川嶋みどりさんです。川嶋さんいわく、その秘訣は「うつぶせ寝」と「がまんしないこと」にあるといいます。

重い糖尿病だった母がウソをつくようになった理由

75年も看護師をやっていて気づくのは、病院も世間も「あれもダメ、これもダメ」と禁止事項が多いことです。健康のための節制というのはわかります。でも、あまりに禁止ばかりだと、嫌になってしまいます。病人や高齢者だけでなく、誰だってそうでしょう。

私の母を例にして、お話しします。

母は、かなり重度の糖尿病でした。生菓子が大好きでしたが「甘いものはダメ」と禁じられます。でも、大好きという気持ちまでは止められません。

すると、どうなるか?

心の中で、自分を責めるようになります。それがつのると「自分らしさの喪失」につながっていくのです。母の場合は、ウソをつくようになりました。


「今日、山田さんがお菓子をもってきてくれたの。だから3分の1だけ食べたのよ」と言い訳します。ときには「残りは捨てたのよ」などと、明らかなウソもありました。なんだか聞いている私まで、申し訳ない気持ちになってしまいます。

こんなときは、どうしたらよいのか?

禁止するばかりではなく、その人が「できること」や「したいこと」などからアプローチしていけばいいと思います。

たとえば、糖尿病でもケーキが大好きという人には「ケーキは食べていいですよ。その代わり、何か減らせるものはありますか?」と本人に選択させるのです。

これなら本人の意志を尊重することになり、生き方の可能性を広げることにもなります。
その結果、生命力や治る力を引き出すことができるのです。

ちなみに、この方法は、私がだいぶ以前に看護の現場に取り入れ、今も多くの看護師たちに引き継がれています。私の友人に健康指導の第一人者がいるのですが、彼女もその効果を認めてくれています。