いびきが軽くなり、便通の改善にも

以下、うつぶせ寝の効用を挙げてみます。

1:気道が広がり、呼吸が楽になる

いびきをかく人がいますね。それは舌根(ぜっこん)沈下が起きているからです。舌が下がってのどの奥を塞ふさいでしまっているため「ゴ~」とか「ンゴッ」という音が出る。「いびきがうるさい」と怒られている人も多いでしょう。じつはこれ、うるさいとかで済む話ではなく、とても怖いことなのです。

なぜなら、舌がのどの奥に落ち込むと酸素が肺に入っていきません。そのため血液中の酸素が少なくなります。そこで、体の隅々に行き届くように、一度に運ぶ酸素量を増やそうと赤血球を増やします。

睡眠中は水分不足になりがちで、さらに赤血球が増えると、血液がドロドロ状態になって流れが悪くなり、心臓や脳の血管を塞ぎかねません。つまり、心筋梗塞や脳血栓の原因となってしまうのです。

うつぶせ寝になると、舌がのどの奥ではなく口もとに落ちるので、空気が通りやすくなり、体に酸素を十分に送ることができます。体の隅々にまで酸素が運ばれるため、全身の細胞も活発に働きます。ラクに呼吸ができるから、ぐっすりと質のよい睡眠にもなります。おまけに「いびきがうるさい」と文句を言われることもなくなります。

2:食べ過ぎ・飲み過ぎの人の味方

仕事が遅くなり、夜の9時、10時に食事をする人が少なくありません。このため、胃腸の調子が悪い人が多いようです。おなかが重いような、熱いような感じがして、よく眠れない人も多いのではありませんか?

食後から寝るまでの時間が短いと、胃には未消化の食物が残っています。そのまま仰向けに寝ると、胃が背骨の方に沈み、胃のなかの食物が腸に流れにくくなってしまいます。その結果、胃もたれを引き起こします。また、胃液が食道に逆流し、気道にまで流れ込んでくる危険もあります。

これを防ぐには、少し右向けのうつぶせがベストです。これによって、胃のなかのものが腸に流れやすくなり、消化・吸収が速く進みます。夜遅くに食事をする人、食べ過ぎ・飲み過ぎの人は、うつぶせ寝がオススメです。

3:便通を促進する

胃腸の働きがよくなれば、当然、便通もよくなります。便秘で悩む人にとって、これはうれしいと思います。

女性は体のつくり的に、胸式呼吸が多くみられます。いっぽう、うつぶせ寝にすると、ちょうど座禅を組んだときと同じような、下腹を使った腹式呼吸になります。ゆっくりした深い呼吸になり、体はリラックスできます。同時に、脳波がアルファ波になることもわかっています。座禅や瞑想をしているときの脳波です。

4:誤嚥の予防によい

年を重ねるにつれて、睡眠中の誤嚥(ごえん)が多くなります。口のなかに溜まっている唾液や逆流してきた胃液などを、誤って気管のほうに飲み込んでしまうのが誤嚥です。
誤嚥性肺炎という言葉をご存じでしょうか? 誤嚥によって食物のかすや口内のばい菌などが気管に入り、炎症(肺炎)を起こしてしまうのです。

予防のためには、寝る前の歯磨きやうがいが大切なのは当然ですが、うつぶせ寝も適しています。唾液が外に流れ、誤嚥を防ぐため、肺炎の予防にもなるのです。

※本稿は、『長生きは小さな習慣のつみ重ね――92歳、現役看護師の治る力』(著:川嶋みどり/幻冬舎)の一部を再編集したものです。


長生きは小さな習慣のつみ重ね――92歳、現役看護師の治る力』(著:川嶋みどり/幻冬舎)

看護の世界で75年、生と死に向き合い〝人間らしく生きる〟ことを問い続けてきた92歳の現役看護師。生命を輝かせ自己治癒力を引き出すには、あたり前の暮らしを見直すこと。ぴんぴんキラリ健康長寿の秘訣決定版。