体の衰弱と共に弱っていく心

私は、答えを知りたかった。正解を知りたかった。しかし、どの育児本にも妊婦向けの雑誌にも、そんなものは載っていなかった。

「悪阻は安定期には終わる」と書いてあるのに、私の悪阻は終わらない。「こうしたら軽くなる」をすべて試しても楽にならない。「お母さんのストレスが赤ちゃんに1番悪い」――その文言を目にした瞬間、雑誌を壁に投げつけた。そんなこと、これみよがしに言われなくとも、誰より自分がわかっていた。

体の衰弱と共に弱っていく心は、悲しいほど冷静さを失う。そしてとうとう、私は元夫に告げた。「自信がない」と。「私はちゃんとした母親になれない」と。元夫は、泣きじゃくる私を見下ろして「見損なった」と吐き捨てた。そうして、これみよがしに私の目の前でタバコを吸いはじめた。

私の悪阻症状は、“匂いづわり”も顕著であった。タバコはその最たるもので、彼が吐き出す副流煙があたりをただようと同時に、私はトイレに駆け込んだ。嘔吐と共に流れる体液のすべてが、白い便器にぼたぼたと落ちた。