同心円理論

所得や住民の学歴という、豊かさをめぐる指標についていえば、江戸川を渡った千葉県側で都心よりもむしろ高い数字を示している。

千葉県内の京成電鉄沿線はベッドタウンであり、東京都内とは様相を異にしている。こちらでは、東京西側ほどではないにせよ中学受験が盛んであり、大卒の家庭も多い状況になっている。都心に近いところより、離れたところに余裕のある人が暮らすというモデルがある沿線である。

『関東の私鉄沿線格差: 東急 東武 小田急 京王 西武 京急 京成 相鉄』(著:小林拓矢/河出書房新社)

都市社会学でよく使用されるアーネスト・バージェスの同心円理論では、都市の中心に業務地区が存在し、その周辺に軽工業地域と劣悪な住宅地が存在する。その外側には労働者居住地帯、住宅地帯、通勤者地帯と広がっている。

この同心円モデルが適用しやすいのが、京成電鉄沿線である。その証拠に、京成船橋よりも東側に人は住み、この駅で乗り換えて都心に向かおうとする人が多いということがある。

京成電鉄は、もともと「軌道」としてつくられ、さらには成田山新勝寺への参詣(さんけい)のために建設された経緯もあってか、地域づくりに力を入れてこなかったという歴史がある。

もちろん、土地の分譲なども行なったものの、東急グループなどのように大規模な開発を手がけたわけではない。むしろ、沿線から離れた地域で土地開発に力を入れたという歴史もあるのだ。