米を買えたはず

そう聞くと、他国に略奪に行きたくなる気持ちもわからないでもない。しかし謙信が亡くなったとき、上杉家の蔵には金がうなっていた、という説があります。

謙信の時代、庶民は青苧(あおそ)から作った服を着ていました。そして越後はこの青苧が取れるのです。

後に木綿が入ってくるまでは、越後で青苧を収穫し、日本海交易を通じて京都まで運び、売りさばくことができた。だからお金は持っていたのです。それを考えれば、米が取れなくとも、お金で買うことは十分にできたのではないか?

「略奪すればタダだ」と思われるかもしれませんが、善悪は別としても、軍事行動にはお金がかかるもの。であれば、素直にお金で米を買ったほうがよかったのでは、という気もしないでもない。

総体として、関東管領になった上杉謙信が、昔ながらの関東の秩序のありかたを好んでいたことは間違いなさそうなので「だから関東に出兵した」という線は捨てきれない。このあたりの検討は、これからの課題ということになるでしょう。