「そんなつもりじゃなかった……」と嘆いても、あとの祭り。スポーツジムにママ友、職場など、イヤと言えずに人づきあいで泣きを見た人たちが告白します。木村さん(仮名)は、仲のいいママがある時を境に豹変したというーー(取材・文=福永妙子)

その話が出るまでは!

人づきあいではできるだけ波風を立てたくないけれど、事と次第による。今、それを心から実感しているのが木村薫さん(48歳、仮名=以下同)だ。彼女は、息子が小学校の頃からつきあいのあるママ友・ナオミさん(53歳)への対応に、ほとほと困り果てている。

「子どもたちが大きくなった今でも、ナオミさんを含めた何人かのママ友とはたまにお茶しているのですが、去年の暮れに『デリバリーを頼んで、うちでランチしようよ』と彼女から誘われて。お決まりのファミレスと違ってホームパーティーみたいで楽しみだったし、私を含め、4人のママ友がおじゃましました」

当日、寿司の出前に加えて、ナオミさんが腕をふるった中華料理もご馳走になるうち、大学生の娘が帰宅。

「英会話教室に長年通っていて、英語も堪能。礼儀正しくて、本当にいい娘さん。彼女も交えて話も弾んでいたんです。……ダイエットサプリの話が出るまでは!」

すっかり大人びて美人に成長した娘に対して、一同は「お嬢さん、すごくきれいね」「モデルみたい!」と大盛り上がり。母親であるナオミさんは「そんなことないわよ~」と言いつつも、満面の笑みで「実はこの子、サプリを飲んでてね」と言ったのだ。そこにいるのは、着実に中年体形に移行している女たちばかり。「えっ、そのサプリってどんなの!?」と食いつく。すかさず、「これです」と娘が隣の部屋から分厚いファイルを持ってきた。

「効果を謳う細かい文字に、体重の変化がわかるグラフなど、本格的な資料でした。ママ友一同、サッと顔色が変わりましたね。あ、勧誘が始まるぞ、と……」

ただ痩せるだけではなく、体質を変えてくれるので、飲み続ければ二度と太らない体になるという。問題はその費用だ。簡易コースでも30万円、本格的なコースはなんと60万円! 散々ご馳走になった手前、「だったら要らん」とは言えない空気の中、「お金があればやってみたい」と、ほどほどにノッた会話が続く。

そのうち、ある者はトイレ、ある者は「家にメールしなきゃ」と席を立ち、逃げそびれた木村さんだけが話を聞くはめに。帰り道、みんなから「本気で興味あると思われたかもよ」と心配された。後日、悪い予感は的中。ナオミさんから頻繁にメールが来るようになったのだ。

「出だしは無難なご機嫌うかがい。で、最後に必ず『ダイエットサプリ、どう?』。気を使って話を聞いていたのが裏目に出てしまいました」