タイトルに騙されてはいけない

見終わった後の爽快感と『PERFECT DAYS』と言うタイトルに騙されてはいけない。彼が見たのは完全なる日本精神の喪失だったのではないか。小津安二郎は1930年代から既に日本の「家族」と「精神」の崩壊を予見していた。今はそれから約100年。

『PERFECT DAYS』は、「日本精神崩壊の完成」を描いていたと将来語られることが無いように、私たちは直ぐにも失われたものを取り返すべきなのではないか。

私はまだ間に合う、と思っている。戦後の間に合わせの、「もの」と「便利さ」に偏った日本を冷静に見つめる目を持つならば。自ずと世界との対話の糸口は見いだせる。便利さや快適さ、見せかけの豊かさの対極にある西洋の憧れ、「幻想としての日本の美」を私たちが取り戻すことができるならば。

P.S. ドイツの監督にここまで日本を理解していただくと、「悔しーっ」という気も致しますが、ヴェンダースの日本愛は本物だと思います。彼の警告に応え、日本の文化を取り戻せたら素敵ですね。

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