点滴でしのぐ日々

それで病院に行くと、先生の顔を見るなり、ベッドに倒れ込んじゃった。もうフラフラになってて。それで検査したら、あまりにも数値が悪すぎるもんだから、先生たちも大あわてになっちゃって。

キイトルーダはまだ新しい薬なので、副作用についてはわからないところもあった。腎臓に副作用が出て、人工透析をいきなりやらなきゃいけないような数値になっていたんですね。でも透析よりも先に輸血をしなければということになったり、また大量のステロイドを投与したり。

僕は、糖尿病もあるので、ステロイドを打って食事すると、インシュリン打ってても血糖値が異常な数値になるんですよ。それまで高くても二百数十くらいで収まっていたのが、500とか、450とか、見たこともないような、もうメーターを振り切っちゃうような数字が出る。

でも「ステロイドのせいだから大丈夫、大丈夫」と言われながら、1週間くらいはそんな生活をしていたんです。飯は食えないから点滴でしのいでいた。

──かなりきつかったんでしょうね。

うん、それでも自分でもえらいもんだなと思うのは、経営している会社の従業員の給料のことを考えていたってことだね。毎月25日にはどうしても給料を振り込まなければいけないので、かみさんに電話をして病院まで呼んで通帳とカードを渡して、手続きを頼んでいるんだよね。

そのときに俺を見たかみさんは、「もう駄目だと思った」って。目は虚ろ、言葉はしゃべれない、手は震えている。

「もう本当にひどくて同じ人間とも思えなかった。最期ってこんなもんなんだって思った」と言っていました。

『本音』(著:小倉智昭、古市憲寿/新潮社)