元夫のモラハラに悩む日々
休む間もない子育ての日々において、私たち夫婦の気持ちはすれ違う一方だった。一番はじめに違和感を覚えたのは、産後5日で退院してきたその日に性行為を要求された時だった。産後の1ヵ月検診が終わるまでは、性行為はできない。悪露による出血が続いている最中、ましてやお産で会陰切開をした妻に対して、この人は一体何を言っているんだろう。そう思いながら、淡々とその旨を説明した。すると、彼はため息をつき、渋々といった様子でこう言った。
「じゃあ口でいいや」
「じゃあ」ってなんだ。私はあなたの性欲処理機じゃない。そもそも、そんな暇があるなら少しでもいいから横になりたい。そう思ったけれど、結局私は彼の求めに応じた。人との関係に摩擦が起こることが、私は怖い。それを回避するためなら、多少の無理をすることなど造作もない。それで丸くおさまるなら、そのほうが楽だ。ずっとそう思って生きてきた。それは、虐待家庭を生き抜く上で身につけた処世術でもあった。でも、そんな私の習性は、結果的に状況を悪化させた。
元夫は、基本的には優しい人だった。声を荒げることもなければ、手を出すこともない。ただ、時折思いもかけない暴言を吐くようになった。暴言を投げつけられるたび、私は必死に「やめてほしい」と訴えた。だが、彼は私の声に聞く耳を持たなかった。
「ただの冗談で言ったのに、それで傷つくほうが悪い。俺は悪くない。おかしいのはお前だ」
何をどう伝えても平行線だった。いつからこうなってしまったのか、いつから彼は変わってしまったのか、今思い返してもわからない。ただ、私の臆病さが彼の傲慢さを助長させたことは疑いようがない。
私は、彼の変化に気づけなかった。同じく私自身もまた、母親になるにあたって何かが大きく変わったのだろう。泣き喚く赤ん坊よりも、大人である元夫の言語が理解できない。そのことが、ひどく悲しかった。