テレビならではの良さを伝えたい

司会に関しては、あまり自分が前に出ることは考えてないんです。MCというのはマスターオブセレモニーのこと。会を滞りなく進めるための存在で、僕が盛り上げるのではなくて、会が盛り上がればいい、と思っています。新番組の主役はあくまで「情報」と「視聴者」。僕は一番前にいる裏方、と自分のことを捉えているので、スタッフの方が集めてくださった「情報」と、コメンテーターの方々の意見、それらと視聴者の方の架け橋になるのが僕の役目です。

番組ではSNSでリアルタイムに視聴者のみなさんの意見も飛び込んできます。それをコメンテーターの方々と取り上げていくという生放送ならではのしくみも含めて楽しみですね。でも番組を通して公平性は保たれるようにしたい。テレビならではの良さを再認識していただけるよう頑張りたいです。

例えば今流行りの「サブスク」は、音楽でいうと毎月定額を支払い、自分が好きなものを選ぶ。そして選んだ曲と似通ったものを勧められ、簡単に好みのものと出会える。昔は、ないお金の中からやっとアルバムを買い、ライナーノーツを読み込んでいたから曲への愛着が全然違う。

今はAIが分析し「あなた、こんなの好きでしょ?」って提案してくるものをサッとダウンロードして。確かに好きな曲に簡単に出会えるんですけど、僕は雑誌で育った世代だからなのか、なんだかこの流れに疑問を持ってしまうんです。雑誌って、何人もの編集者さんたちの渾身のアイデアが詰まっていて、自分が知らない、好きじゃなかったジャンルのものに出会える。

自分の好きなものの統計からはじき出されるAIの提案ばかりを聞き入れていると、深くはあるけど狭い自分の井戸の中だけでずっと泳いでる状態になるんじゃないかな? と。

僕は、テレビは雑誌と同じく、AIの提案ではないごった煮の出会いを提供してくれる貴重な場だと、希望を持っています。ネットの漠とした情報と違って、事実確認を厳しく行っている点でも、まだまだネットは敵わないところがある。

今、テレビは旗色が悪いと言われていますが、揺り戻しで、その良さが再認識される時が来ると考えています。そしてそのために、テレビ業界も自己改革をしなければなりません。僕も、観てくださる方が1日を気持ちよく始められるような番組作りをすることで、そのお手伝いができたらと思っています。