「日常」か「大河」か
以上を踏まえて、あくまで『大河ドラマ』として成立させるのに、テーマがやっぱり「平安貴族の動向」では、厳しいのではないでしょうか。
以前の記事でも記しましたが、当時日本列島には1000万人ほどの人が生活していました。そのうちの貴族は500人ほど。家族を含めても2000~3000人くらいでしょうか。
貧困や感染症に苦しんでいただろう、残りの999万数千人から離れて、京都で豪華に暮らすごくごく少数の人たちがどうした、というドラマは、はたして「大河」なのか。
民放では毎日、誰か一人の「日常」にフォーカスしたドラマが放送されています。それと同じだよ、ということがハッキリ明示されていたのであれば、もちろん話は別だと思います。
でも、それは「日本の歴史を描いたドラマ」と言えるのか。とりあえず「日本史を舞台にした」という立場を取る必要はないんじゃないか…。それがここまで『光る君へ』を見て感じたことです。
以上、今回は世の中の反応を怖れる歴史研究者がびくびくしつつ、正直な感想を記してみました。
『「失敗」の日本史』(著:本郷和人/中公新書ラクレ)
出版業界で続く「日本史」ブーム。書籍も数多く刊行され、今や書店の一角を占めるまでに。そのブームのきっかけの一つが、東京大学史料編纂所・本郷和人先生が手掛けた著書の数々なのは間違いない。今回その本郷先生が「日本史×失敗」をテーマにした新刊を刊行! 元寇の原因は完全に鎌倉幕府側にあった? 生涯のライバル謙信、信玄共に跡取り問題でしくじったのはなぜ? 光秀重用は信長の失敗だったと言える? あの時、氏康が秀吉に頭を下げられていたならば? 日本史を彩る英雄たちの「失敗」を検証しつつ、そこからの学び、もしくは「もし成功していたら」という“if"を展開。失敗の中にこそ、豊かな"学び"はある!