何かが変わったわけではなかった
あまり思い出したくない過去だが、イタリア人の夫は、私が原作者でありながら映像化の詳細をほとんど知らされていないという事実と、諸々の契約を、こちら側の弁護士を介した審議もせずに許諾してしまったことを知って激怒した。
夫の怒りは、当時夫の勤め先だったシカゴ大学の法学部の先生まで介入してくる事態となり、日本の出版社と家族の意見の板挟みでもがいているうちに、私は急性胃潰瘍で病院に運ばれた。
黙っていても埒があかないので弁護士を雇い、問題点を顕在化させることにしたが、その結果、私は外国住まいの強烈な漫画家というイメージを極めただけで、何かが変わったわけではなかった。