赤字でも信玄堤を築いた理由

さらにバスは一路、甲斐市の信玄堤公園へ向かいます。

信玄堤は、釜無川と御勅使川の治水を行うために信玄が築いたとされる堤防。今も現役で機能しており、市民を水害から守っているそうです。

信玄堤から甲府盆地を眺める(写真:婦人公論.jp編集部)

先生いわく「近辺での石高と、工事にかかったコストを単純に比較すれば、おそらく大変な赤字だった。それでも信玄が着手したのはなぜか? 甲斐の領民を守りたいという強い気持ちを、ぼくはそこに感じる」とのこと。

堤の上からの雄大な景色も相まって、信玄の大きさをあらためて感じるお話です。

なお、ツアーに同行したコンダクターさんは「寒風吹きすさむ河原で、しみじみと小一時間。歴史好きなみなさんの高みまで私はたどり着けそうにない…」ともらしていました。

これにて2日目の前半は終了。後半は信玄の後継者・勝頼の歩みに沿ってツアーは進んでいきます。

初回:徳川ツアー「桶狭間」はこちら


「失敗」の日本史』(著:本郷和人/中公新書ラクレ)

出版業界で続く「日本史」ブーム。書籍も数多く刊行され、今や書店の一角を占めるまでに。そのブームのきっかけの一つが、東京大学史料編纂所・本郷和人先生が手掛けた著書の数々なのは間違いない。今回その本郷先生が「日本史×失敗」をテーマにした新刊を刊行! 元寇の原因は完全に鎌倉幕府側にあった? 生涯のライバル謙信、信玄共に跡取り問題でしくじったのはなぜ? 光秀重用は信長の失敗だったと言える? あの時、氏康が秀吉に頭を下げられていたならば? 日本史を彩る英雄たちの「失敗」を検証しつつ、そこからの学び、もしくは「もし成功していたら」という“if"を展開。失敗の中にこそ、豊かな"学び"はある!