「原磯はそういうやつですよ。うちの檀家総代もやりたいと言っていますから……」
 阿岐本が片方の眉を吊り上げる。これは興味を持ったときの特徴だ。
「檀家総代を、ですか」
「本気かどうかわかりませんがね。だから、そういうことをやりたがるやつなんです。町内会でも会長の藤堂よりも積極的ですし……」
「人のやりたがらない面倒なことをやろうとする奇特な方なんですね」
「奇特というか、まあ、仕切りたがりですね」
「とにかく、会って話をしてみようと思います」
「会って楽しいやつとも思えませんが……」
「町内のこととか、お詳しいでしょう」
「そりゃ詳しいでしょうね」
「だったらお話をうかがう価値はあると思います」
「はあ……」
「あと、こいつは忘れねえでいただきたいんですが……」
「何でしょう?」
「一人で戦うとおっしゃいましたが、私らは味方です。住職は一人じゃありません」
「あ……」
 田代は意外そうな顔をした。「そいつはありがたいお言葉です」
 阿岐本が立ち上がった。話は終わりだ。日村も立ち上がった。
本堂を出たところに、谷津が立っていた。