「ここで正直にしゃべってもらえねえとなると、署まで来てもらうことになるな」
 まずいなと日村は思った。
 署に連れていかれたら面倒なことになる。任意でもなかなか帰してくれないだろう。あれこれ理由をつけてしばらく取り調べを受けるのだ。
 阿岐本が言った。
「警察の捜査にはいくらでも協力しますよ。でも、理由もなく引っぱられるのは嫌ですね」
「理由はあるさ。暴対法や排除条例でどうにでもなるって言ってるだろう。ごちゃごちゃ言ってると、逮捕だぞ」
 こいつなら本当に逮捕しかねないな。日村がそう思っていると、山門のほうから声がした。
「ええと……。この人たち連れていかれると困るんですけど……」
 その場にいた四人が同時にその声のほうを見た。
 甘糟だった。
 谷津が言った。
「何だ、てめえは?」
 甘糟が手帳を出してバッジを見せた。
「あの……。北綾瀬署の甘糟といいますけど……」
「北綾瀬署だ? あ、仙川んとこの……」
「はい、そうです」
「そうか。この阿岐本の組を担当してるんだな」
「ええ、阿岐本組はうちの署の管内にありますから……」