「おい、いったい何の相談をしてるんだ」
 阿岐本が言った。
「おや、これは……。中目黒署の刑事さんですね。お名前はたしか……」
 日村が言った。
「谷津さんです」
「俺の名前なんてどうでもいい」
 田代が谷津に言った。
「警察が寺に何の用だ」
 谷津が田代を睨む。睨んでいるわけではないのかもしれないが、人を見るときの目つきが悪い。
 ヤクザと警察官はこういう目つきになる。
「別に俺だって、寺なんかに来たくはねえよ。だがな、こう反社のやつらが頻繁に出入りすると、来ざるを得ないんだよ。住民たちが追放運動やってるらしいしな」
「それだよ」
 田代が顔をしかめた。「こっちは迷惑してるんだ。あの集会を止めさせてくれないか」
「暴力団員が来なけりゃ、住民だって追放運動なんてやりゃしねえよ」
「この二人は俺の客だ。文句は言わせないよ」
 谷津が阿岐本を見る。
「何を企んでやがるんだ? 素直に話せよ」
「何も企んではおりません。ご住職と話をしていただけです」
「どんな話をしていたんだ?」
「スナックの話とか……」
「スナック?」
「ええ。近くにいいスナックがあるとうかがいましてね。今度飲みに行こうかと……」
「この地域の飲食店で飲み食いなんてさせねえよ」
「おや、それは残念です」
 谷津は舌打ちした。