年齢が十違うだけで

後日、阿佐田さんに会って確かめると、話はやはり本当だった。

『ムツゴロウ麻雀物語』(著:畑正憲 /中公文庫)

「よく行きましたよ。土蔵の二階でねえ。ボクが打ち始めの頃でした。ほら、覚えたての頃は熱中するでしょう、あれですよ」

「夢中で打った頃ですね」

「若かったから」

「マアちゃんはどうしました」

「死にました」

「え、行方不明だと言ってましたが」

「自殺したんです」

「…………」

「船に乗って行って、どこそこで飛びこめば死体が上がらないからとか言ってました。これから死ににいくというので、皆で拍手し、行ってこいと送り出したんですよ、あれは」

そういう時代だったのだろう。私よりも六、七年先に生まれた人たちは、嵐(あらし)をまともに喰らっている。年齢が十違うだけで、ずいぶん違う生き方を強いられているのだ。