年齢が十違うだけで
後日、阿佐田さんに会って確かめると、話はやはり本当だった。
「よく行きましたよ。土蔵の二階でねえ。ボクが打ち始めの頃でした。ほら、覚えたての頃は熱中するでしょう、あれですよ」
「夢中で打った頃ですね」
「若かったから」
「マアちゃんはどうしました」
「死にました」
「え、行方不明だと言ってましたが」
「自殺したんです」
「…………」
「船に乗って行って、どこそこで飛びこめば死体が上がらないからとか言ってました。これから死ににいくというので、皆で拍手し、行ってこいと送り出したんですよ、あれは」
そういう時代だったのだろう。私よりも六、七年先に生まれた人たちは、嵐(あらし)をまともに喰らっている。年齢が十違うだけで、ずいぶん違う生き方を強いられているのだ。