標準語でこうはならないだろう。

「お稽古、大変ですか?」

「そうですねえ」

「その格好で新幹線に?」

「そうですね」

「いやあ、おきれいです」

「そうですか」

そんな答え方を延々続けていたら、なんと無愛想で言葉を知らない若者かと思われてしまうだろう。ほんの少しの違いなのに、京都言葉にはえも言われぬ耳心地のいい雰囲気があることに気がついた。

そんな舞妓さん独特の言い回しに憧れたせいかもしれない。京都弁といえば、「えらいおおきに」とか「そうどすか」とか「よろしおすなあ」とか、そんな言い方しか知らない。しかし、それらは必ずしも一般の京都人が使う言葉ではない場合があるらしい。

祇園言葉は別にして、最近、地方へ行っても地元の言葉があまり聞かれない。メディアが使う標準語が浸透したせいか。あるいは別の土地から来た人間の前では方言を使わないよう気を遣ってくださるからなのか。

気を遣ってくださっているのに申し訳ないが、私としては残念な気持になる。せっかく見知らぬ土地に来たのだから、その土地の言葉を耳に留めたい。言葉は文化である。その地の風景や食べ物と同様、文化を味わいたいと思うのである。