現在の弾けるような笑顔と、ハキハキと意見を言う滝野さんの姿からは想像しがたいが、感情を押し殺し、砂をかむような思いで毎日を送っていた時期があったという。だが、滝野さんが50歳のとき、父親が寝たきり生活を経て亡くなったことが転機となった。
「仕事を愛し、音楽や食べることを楽しんでいた父ですら、『自分の人生は無だった』と弱音を吐いて亡くなったことがショックで。ああ、私もこのまま決断しないでいたら、『なんのための人生だったの』と愚痴って死ぬことになる。そんなの絶対イヤ。最期は、『楽しい人生だったわ。ありがとう』って言いたいと思ったの」
子どもたちにも背中を押され、52歳でついに滝野さんは一人で家を出る。以降、別居生活に入った。父親の死をきっかけに「ジェロントロジー(老年学)」に興味を持ち、30年ぶりのアメリカ留学も決行する。
帰国してから5年後のあるとき、「アメリカの知り合いから送られてきた本に『平均年齢74歳のチアダンスチームがある』と書いてあったのを読んで、『何これすごい、やってみたい!』とひらめいちゃった」。
昔から、興味が湧いたら挑戦してみないと気が済まない。
「ハマるかハマらないかは、やってみなければわからないでしょう。やるからには一生懸命。それでダメなら引き下がる。とにかくまずは始めてみないと」