アメリカから資料を取り寄せ、渋谷の喫茶店に友人を10人ほど集めて話をすると、数人が賛同してくれた。始めるなら指導者が必要だと考えた滝野さんたちは、その足でメンバーの一人の母校、青山学院大学のバトン部をアポなしで訪問したという。
「チアダンスもバトンも似たようなものだと思って(笑)、その場にいたキャプテンにコーチをお願いしました。思慮分別はないくせに、行動力だけは人一倍あるんです。考えても仕方のないことに悩んでも、現状はよくならないし。ましてや、相手のあることではね。
それに、ちょうどいい時期、都合のいいタイミングを待っていたら何もできないというのは、結婚生活で身に染みていましたから。貧しかろうが年をとろうが、もう自分が楽しむことを制限されたくないという気持ちだったのね」
チームを結成するにあたっては、グループ内での冠婚葬祭は一切しない、お土産のやり取りも禁止などを会則として明文化した。
「お節介だの義理人情が、私はもともと大の苦手。そんなことで煩わされず、純粋にチアダンスを楽しむグループにしたかったの」
週に1回の練習は、よほどのことがない限り休まない。さすがに90歳を過ぎた頃から厳しいと感じる動きもあるが、「コーチには、『私がついていけないから、この振りはやめましょう』と頼むことはありません。難しかったら、練習をちょっと頑張るのみ!」。
滝野さんの普段のファッションも、鮮やかで若々しい。「日本では年相応のものを着ていないと、白い目で見られがち。でも、年を重ねた人ほど明るい色が似合うと私は思っているし、気持ちも上がるでしょ」。
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人は人、自分は自分。そのときどきでできることを精一杯やって、無理だと思えばすっぱり手放して後悔しない、振り返らない。3人のお話から見えてきたそんな共通点が、人生を輝かせる秘訣なのかもしれない。