本人の口から出てきた「褒め言葉」を使う

単に褒めるだけでなく、普段その人が、どうやって他人を褒めているかを観察することも大事です。人は、自分自身が言われて嬉しいと感じる言葉を、相手に対して無意識的に使うことが多いのです。

ですから、本人の口から出てきた「褒め言葉」を使って褒めてみましょう。

先日、86歳の佐藤さんがきれいな折り鶴を折ったので、私はつい短絡的に「すごいですね!」と言ってしまいました。

すると佐藤さんは、「なにもすごくないわよ」と不機嫌になり、私はすっかり嫌われてしまったのです。

そこで私は、佐藤さんがなにかを気に入ると、いつも「素敵ね」と言っているのに気づき、次に折り鶴を折ったときは、「素敵ですね」と言ってみました。

すると佐藤さんは、にっこりと笑い「あら、ありがとう。あなたにあげるわ」と言って、私に折り鶴をくれました。

※本稿は、『ボケ、のち晴れ 認知症の人とうまいこと生きるコツ』(アスコム)の一部を再編集したものです。


ボケ、のち晴れ 認知症の人とうまいこと生きるコツ(著:川畑智、監修:内野勝行、マンガ:中川いさみ/アスコム)

認知症の人とともに生きる上で何より大切なのは、「笑う」こと。認知症介護の中にだって、おたがいに大笑いできる瞬間や、日々の介護の中で心が通じ合う瞬間、心がほっこりと温かくなる瞬間が必ずあります。そんな「晴れ間」を作るための考え方や方法を、著者が経験したエピソードととともに一冊にまとめました。漫画家・中川いさみ先生のクスっと笑えて、じんわり心が温まるマンガとともに、お読みください。