「私もお線香あげるたびに、話しかけている。いつも近くにいる感じがするものね」(カンナさん)

カンナ 1月2日は父の誕生日だったでしょう。母はちゃんとカードを用意して、メッセージも書いていたみたい。

はづき 父は見せてくれないけど、たぶん「ありがとう」とか「愛している」とか書いてあったんじゃないかしら。

カンナ あの世代の日本人には珍しく、しょっちゅう「愛している」と言葉に出す二人だったものね。

はづき 昔は、「これ、お父さんに書いたの」と父宛ての手紙を母に見せられたりすると、「うわっ、お腹いっぱい」と思ったりもしたけど、亡くなった途端、美しい夫婦だなと思えるようになった。

カンナ いなくなってみると、母の偉大さがよくわかる。86年間、現役で仕事をしていたのもすごいし、いろいろな意味で母が防波堤になって家族を守っていたこともわかった。目下の問題は、92歳の父をどうするか。弟がスペインに戻ったらどうしたらいいんだろう。

はづき いっそ父を、スペインに送っちゃうというのはどう?

カンナ それ、いいかもしれない。孫もなついているし、父にスペインはよく似合う。